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TMU高大連携室スタッフ

Author:TMU高大連携室スタッフ
東京都立大学、高大連携室のブログ。イベント情報や、高大連携室でのできごとなど、活動記録を中心に掲載します。所属する教員・学生スタッフがそれぞれの視点からつづります。
E-mail:koudairg@tmu.ac.jp

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TMU高大連携室のスタッフブログ
~活動記録とお部屋でのできごと~
大学院生インタビューNo.1 客野遥さん(物理学専攻 D2)
冬も深まり、外に出るのが厳しい季節になりましたね。此度、高大連携室は「首都大ではどんな研究が行われているの?」「研究活動の様子が知りたい」という声にお応えすべく、本学で活躍されている大学院生にインタビューを行う企画をスタートしました。主に大学院生の研究内容や大学生活について、高大連携室スタッフとの対談を交えてお伝えしていきたいと思います。

記念すべき第1回は、
2012年度第7回ロレアル-ユネスコ女性科学者 日本奨励賞」(物質科学分野)を
受賞
された理工学研究科物理学専攻博士後期課程2年(ナノ物性Ⅰ研究室所属)
客野 遥(Kyakuno Haruka)さん
にお話しを伺いました。



客野さん1
インタビューにお答えいただいた客野遥さんです。


○研究内容について

高大スタッフ: この度の受賞おめでとうございます。受賞された研究内容を教えてください。
客野さん: 私は今ナノ物性研究室というところで「ナノ空間での水の性質」の研究を行っています。具体的には、カーボンナノチューブ内のナノ空間に閉じ込められた水についての研究です。ナノ空間とは、1ナノメートル=10のマイナス9乗メートル(1メートルの10億分の1)で、水分子だったら三個くらい並ぶくらいのすごく狭い空間のことです。そういう狭い空間に分子や原子が収まると、それらの分子は私たちが生活しているような「普通の空間」とは異なる性質を示すようになります。水分子の場合、カーボンナノチューブの中に入れると室温で氷になるなどの普通とは違う性質を持つようになります。そしてカーボンナノチューブはいろいろな太さのものがあるので、その筒の太さをいろいろ変えると、そこに閉じ込められた水の性質も少しずつ変わっていきます。ちょうど良い太さのカーボンナノチューブを使うと、水分子が5角形に並んだ構造の結晶を、ちょっと太くすると6角形、7角形、8角形のリングを作ることが出来るんです。

高大スタッフ: 研究の一番のアピールポイントを教えてください。
客野さん:やっぱり、水って身近なものなんだけど分からないことが多いんです。つまり、やってみると新たな現象が分かることが多い。そして一般的な水からナノスケールの水まで、いろいろな個性を持っている。また、その応用の可能性も秘められている、ということです。


○「研究すること」について

高大スタッフ: 首都大は比較的どこの学部も「基礎研究」の色が強いですが、「基礎研究」の楽しさ、やりがいはどんなことですか?
客野さん: 繰り返しになりますが、水ってすごく身近なものであるにも関わらず実は良く分かっていないことが多いんです。例えば氷は、液体の水に浮きますよね。でもそれって本当はすごく不思議なことで、水以外の液体の場合は結晶の方が密度が高いので、沈んでしまう。でも水の結晶体である氷は、浮く。なんでそうなるのか、というのは実はまだ詳しくはわかっていません。「普通の水」では分からないことも、ナノレベルからアプローチしていくと分かる可能性があるのです。

高大スタッフ: 高校生にとって、研究室の様子って想像もつかないものだと思います。研究室ってどんなところですか?
客野さん: 研究室に配属されると授業もあまりないので、ほとんど室内にいることになります。だいたい部屋に一人一つ机があって、そこで勉強したりPCで作業したりします。実験する人は実験室で仕事をして、また机でデータをまとめたりします。あとはみんなでお昼に行ったりとか、飲み会をしたりもします。

高大スタッフ:「理系の研究者」というと研究室にこもって実験して…というイメージが一般的にもたれているかと思うのですが、実際のところはどうですか?
客野さん: そんなことはないです。むしろ、自分の研究をいかに人に伝えるかが重要になってくるので、プレゼンテーションスキルも重要だし、自分の研究をよく知らない人でも分かってもらえるように説明するスキルも必要になります。実際、学会などで若手研究会に参加して、他大学の院生や先生方と議論や交流をして知り合いを作ることも多いです。


○進路について

高大スタッフ: なぜ物理学を専攻することにしたのですか?
客野さん: 中学生のころから、理系科目が好きでした。高校2年生の時に物理を選択して、当時担任でもあった物理の先生からアインシュタインのビデオや宇宙についてのビデオといった物理学に関連するいろいろなビデオを見せてもらったり、「なぜ虹が七色に見えるのか」とか「宇宙の謎」などの「身近な物理学」についてお話をしてくれました。そのお話を通して物理学の幅広さとか面白さを感じ、興味を持ちました。

高大スタッフ: 女性で物理学を選ぶ人って少ないような気がするのですが…笑
客野さん: そうですね、あまり気にならなかったです。大学受験のとき、見学に行くと「女の子少ないです」と言われて「えーっ」と思うことはありましたけど(笑)。 実際都立大(現・首都大)に入学してみたら私の学年は50人中10人が女性で割と多い代だったので、特に困ることはなかったです。

高大スタッフ: 物理学って宇宙からナノレベルまで、すごく幅広い事象を扱っていると思うのですが、なぜ「ナノ分野」に興味をもたれたのですか。
客野さん: もともと、応用とか、世の中の役に立ちそうなことをやりたいなと思っていました。その中で、ナノ分野というのは比較的新しい分野ということもあって幅広い可能性を持っているのではと思ったからです。

高大スタッフ: なぜ学部卒や修士卒の時点で「就職」ではなく「進学」を選ばれたのでしょうか?
客野さん: まず修士にあがるときは、学部4年生のときに研究室に配属されて初めて研究というものを経験したので、「今まで一生懸命授業を受けて勉強してきたのに、それを実際に発揮できるのはたったの1年なのか…」と感じてもっと研究をしたいと思い修士課程に進学しました。修士を卒業したあとは、実はそのまま博士に進学せず一度外部に出ました。ちょっとイレギュラーなのですが青年海外協力隊としてケニアで2年間、教員免許を持っていましたので現地の学校で理科と数学の教師をしていました。ケニアは乾燥地帯なので、蛇口をひねっても水が出なくて水を汲みにいかなければならないこともあり、その生活を通して水の大切さを身を持って知ることになりました。あと、ゴミの焼却施設がないのでその辺でゴミを燃やしてしまう。その結果環境問題が発生していました。この経験を通して、水問題とか環境問題に興味を持つようになりました。
帰国後は、たまたま修士時代からお世話になっていた研究室の先生から「次の仕事が決まるまでRA(リサーチアシスタント/研究補助員)としてうちでちょっと働かない?」と声を掛けていただいて。そこで、研究補助員としてまた研究室に戻ることにしました。修士時代から水に関する研究を行ってはいたのですが、ケニアから帰国後して水問題に興味をもったこともあったので、博士課程に改めて入学し、研究することにしました。


高大スタッフ: ケニアにいらっしゃったと聞いて今ちょっと驚いているのですが、なぜ青年海外協力隊に行こうと思われたのでしょうか?
客野さん: 昔から国際協力に興味はあったのですが特に行動をしたことはありませんでした。修士課程を修了したのを機に、青年海外協力隊なら現地の生活を経験できるので、良いかなと思っていってみました。

高大スタッフ: 同じ研究室に戻られたということで、修士の研究と博士の研究は同じテーマをあつかっているのでしょうか?
客野さん: 修士時代は本当に「基礎研究」で、自分の仕事が何に役立つかとかはあまり考えていませんでした。今は、水問題に興味をもったこともあり、そういう方向に話をつなげられるように仕事をしています。例えば水の濾過膜が最近注目されたりしていますのでそこに結びつけられるといいなと思っています。

高大スタッフ: 将来の進路についてはどのように考えていらっしゃいますか。
客野さん: 正直何もまだ考えていません(笑) でも研究を続けたいとは考えているので、大学なり、研究所なり、企業でもよいので何かしらそういう道に進めればいいなぁと思っています。


○大学生活・日常について

高大スタッフ: 研究していて楽しいと思うのはどんな時でしょうか?
客野さん: 楽しいっていうか苦しいことも多いのですが、ナノ分野って比較的新しい分野なので分からないことがたくさんある、つまり新しい発見をする機会もたくさんあります。自分も新しい発見を出来る可能性がある点にやりがいを感じます。

高大スタッフ: 逆に苦しいときは?
客野さん: 実験を失敗してしまったときですね。

高大スタッフ: ちなみにそんな時のストレス解消法は?
客野さん: 普段室内にいることが多いので、なるべく外に出て買い物したり、運動したりしています。夏場は山歩きに言ったり、冬場はスノーボードにいったりします。

高大スタッフ: 最後に、これから科学の道を志す高校生・大学生にメッセージを頂けますか。
客野さん: 私自身、大学進学の際に物理と応用化学で迷った経験があります。
なので、物理にきてしばらくは「やっぱり化学にしておけばよかった…」と思ったこともありました(笑)。でも「継続は力なり」だったかなと今は思っています。一度決めて大学に入ってきたからには、たとえ「ちょっと見込み違いだったかな」「別の学科が良かった」と思ったとしても、とりあえず続けていれば成長するにつれ見えてくるものもあると思うからです。例えば私の研究は物理学ですが実は化学とも密接に関わっていますし。自分で「こういうことをやりたい」という気持ちを持っていれば、自然と道は開けると思います。あと、研究や勉強だけじゃなくていろいろ経験してみてほしいです。例えばサークルなり、アルバイトなり。研究に限らず、一つのことに集中するとどうしても視野が狭くなりがちなのですが、「新しい発想」というものは全然関係ないところから来たりするので。いろいろなことにチャレンジして、自分の世界を広げてほしいです。



<院生スタッフの感想>

身近なものの未知の性質を明らかにするという基礎研究のひとつの意義を教えて頂けたと思います。客野さんによる研究紹介は専門外である私にとっても非常に明瞭かつ刺激的なものでした。それに伴い客野さんがご自身の研究の位置づけ(背景・課題・展望など)について矜持を持って把握されていることが分かりました。これらは研究者にとって大切なことである、とよく耳にしますが、その大切さを教えて頂く非常に良い機会となりました。また、アクティブなパーソナリティをお持ちであるということも印象に残っています。
(日置/人文社会 修士1年)

水は私たちの生活や生命の維持に無くてはならない非常に身近な存在であるにも関わらず、まだまだ分かっていないことが多いという点にすごくわくわくしました。また、客野さんご自身の行動力の高さにも感銘を受けました。私自身を含め、これから研究者を目指す学生の皆さんにも、是非色々なことに挑戦し視野を広げていって欲しいと思います。
(末吉/生命科学 修士2年)


客野さん2
左から日置(高大スタッフ)、客野さん、末吉(高大スタッフ)

客野さん、インタビューにお答えいただきありがとうございました。


記事掲載:学生スタッフ

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